古沢巌さんのバイオリンコンサートに足を運びました。
舞台に立つ彼の姿は、まるで時を超えて音楽の精霊が舞い降りたかのよう。
演奏の一音一音が、空間を震わせ、心に染み渡るようでした。
彼が奏でる音楽の源は、名器「サン・ロレンツォ」。
このバイオリンは、あのストラディヴァリウスによって製作されたもので、ただ美しいだけではありません。
歴史の重みをも背負った、極めて貴重な楽器なのです。
記録によれば、この「サン・ロレンツォ」は、18世紀フランス王妃マリー・アントワネットの専属バイオリニストを務めたジョバンニ・バッティスタ・ヴィオッティが所有していたとされています。
つまり、ヴィオッティがこの楽器を通して、王妃にバイオリンの音色を届けていた可能性があるのです。
そんな歴史的背景を知った上で聴く古沢さんの演奏は、まるでマリー・アントワネットの宮廷に迷い込んだかのような感覚を呼び起こします。音楽が時代を超えて語りかけてくる──そんな奇跡のような瞬間を体験できたことに、心から感謝しています。